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東京高等裁判所 昭和50年(ネ)2310号 判決 1976年10月27日

控訴人、付帯被控訴人、(原審被告) 国

右代表者法務大臣 稲葉修

右指定代理人検事 伴義聖

<ほか二名>

被控訴人、付帯控訴人、(原審原告) 河野義

右訴訟代理人弁護士 古閑陽太郎

右同 高橋郁雄

主文

一、本件控訴を棄却する。

二、付帯控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。

1、付帯被控訴人(控訴人)は、付帯控訴人(被控訴人)に対し一二〇万一四〇〇円及びこれに対する昭和四七年九月一九日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2、付帯控訴人(被控訴人)のその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用は第一、二審とも、これを五分し、その四を控訴人の、その一を被控訴人の各負担とする。

四、この判決の主文二項の1は、仮に執行することができる。

事実

第一、申立て

(控訴人)

一、原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。

二、被控訴人の請求を棄却する。

三、被控訴人の付帯控訴を棄却する。

四、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

(被控訴人)

一、本件控訴を棄却する。

二、原判決中被控訴人敗訴の部分を取消す。

三、控訴人は被控訴人に対し八〇万円およびこれに対する昭和四七年九月一九日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え。

四、訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

五、三項につき仮執行の宣言。

第二、当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用および認否は、次のとおり付加するほか、原判決書事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人)

一、控訴人の主張

1、不動産登記法六〇条一項は、「登記官カ登記を完了シタルトキハ登記原因ヲ証スル書面……ニ申請書受附ノ年月日、受附番号、順位番号及ヒ登記済ノ旨ヲ記載シ登記所ノ印ヲ押捺シテ之ヲ登記権利者ニ還付スルコトヲ要ス」と規定するが、その目的は、この還付を受けた登記権利者がその後登記義務者として権利に関する登記を申請する場合等に登記義務者本人が当該登記を申請していることを確認するための手段として役立たせるためと登記簿が滅失した際にそれを更生する手段として役立たせることの二つである。そしてこの役割を果すための最も重要な事項は、申請書受付の年月日、受付番号及び順位番号の記載内容であり(爾後いわゆる登記済証とならない表示に関する登記等につき、前同条同項但書は、単に登記済の旨を記載し、登記所の印を押捺すれば足りるとしている。なお、乙第五号証の二の八及び乙第六号証の二の七から明らかなとおり、登記官はこの点をチェックしている。)、このほか登記所の印の印影が登記済証の真正を担保することになるのである。これに対し「登記済ノ旨ヲ記載」するのは、単に登記を経由した事実を認証、表示する文言にすぎず、法律上印を押捺する義務を負うものではないことは勿論、かつては手書されていたこともあるとおり、任意の形式で足りるのであって、いわゆる「登記済印」なるものは、登記済の旨等を記載するについて手書にかわって事務簡略化のために使用されている「ゴム版」ないし「木版」にすぎないのである。

2、ところで、登記官は、登記申請書及び登記済証等添付書類の形式的真否につきこれを調査する義務を負うのであるが、本件のような不動産登記法三五条一項三号の登記済証についてみると、同法六〇条一項に規定する「受附ノ年月日、受附番号、順位番号」の記載内容の符合の有無(なお、受付の年月日等はその記載内容が登記簿等と符合するかどうかが重要であり、その記載形式は適当な方法で足りるのであって、通常回転ゴム印、ナンバーリング、手書等で行われている。)及び「登記所ノ印」の印影の形状の照合のほか、例えば登記済証の用紙、貼用印紙、記載の形態等を総合して登記官が審査義務をつくしたか否を判断しなければならないとされている。そしてこれらを総合的に観察し、職務上の経験に基づいて判断すれば登記官のつくすべき審査義務としては足りるのであり、特に登記済証の用紙の質や記載の形態等の点は一見してその真否につき疑いを生じさせる程度のものでない限り、偽造の看過につき審査義務違反を問われないものと解するのが相当である。

3、そして、登記済の旨の記載の部分についても右と全く同様である。これは任意の形式で足りるのであるから、原判決のいうように「真正な印影と対象する」義務を負うものでないことは勿論、例えばきわめて稚拙な文字によるなど一見してその真否につき疑いを生じさせる程度のものでない限り義務違反を問われないというべきである。

なお、東京法務局渋谷出張所において登記済等を刻したゴム版を使用した経緯は乙第三号証のとおり変転しており、また昭和三二年七月九日付民事甲第一一二七号各法務局長及び地方法務局長あて民事局長通達にかかる不動産登記事務取扱手続準則(同年九月一日から実施され、本件の偽造ゴム版の受付年月日に刻された昭和三七年六月当時実施されていた。乙第八号証参照。)三四条一項によると付録第三〇号様式による印版を押印することになっていたが、このように事務簡素化等のため適宜内部的にゴム版を使用したとしても右の義務内容は変らないというべきである。けだし、このゴム版は手書にかかわるものにすぎず、登記済の旨を記載する前述の趣旨からみてこれを登記所の印と同列に扱うことは誤りであり、またその記載の方法は任意の形式で足りるのであるから事務簡素化のため便宜ゴム版を使用したらかえって登記官の審査義務が加重されるというのでは明らかな背理であるし、さらにゴム版を使用したものと使用しないものとの間で審査義務に軽重が生じたり、あるいは右のゴム版の印影が不鮮明なときは修正することなくそのまま交付したり手書により適宜補ったりしているものもあってこれらについては詳細に照合することは不可能な場合があるなどの理由があるからである(なお、右準則によると印版は縦約七センチメートル、横約四センチメートルと定められているとおり形状すら確定的に定まっているものではなく、また字体についても適宜な方法をとりえた。)。

また、本件のゴム版にはその外に「受付年月日、受付番号」の日付及び番号を除いた部分と庁名が刻まれているが、それについても審査義務の内容は右と同様に解するのが相当であって特段注意義務を加重すべき理由はない。特に受付年月日は前述のとおりその内容の突合が重要なのであり、また庁名は全く便宜的なものにすぎないからである。

4、原判決は、本件ゴム版をとらえて、その形状と字体とを仔細に彼此比較しているが、かかる判断は法が登記済の旨を記載する趣旨等を誤解し、行政事務の簡素化たるゴム版をあたかも登記所の印と同列に取り扱う等の誤りに出たものであり、そのため明らかに登記官及び現行登記制度に過重な負担を強いる結果となっているものであって明らかに失当である。

そして、本件の偽造登記済証はそのゴム版を含め到底一見してその真否につき疑いを生じさせるようなものではないし、受付年月日は登記簿等のそれと符合しており、また登記所の印についてみても、その印影の寸法、形状、字体など全く酷似した特別に精緻巧妙なものであるうえ、一度朱肉をつけて多数回押したり、力を弱めたり、紙面の下の物体の形状、質等によって印影は微妙に変化し、さらに使用によって摩滅すること(乙第三号証)をも考えると、これについて偽造の発見も不可能なのである。

5、本件の争点の一つは、登記官が登記申請書添付の登記済証の形式的真否の審査をなすにつき尽すべき注意義務の程度の如何にある。

ところで、印鑑証明書を発行するに際して印影の同一性の照合確認について尽すべき注意義務の程度については、肉眼照合によって疑義がない(その相違が一見明瞭でない)ものについてまで、常に拡大鏡を使用し、あるいは両印影を重ねあわせるとか、検査機械で識別するなどしたうえで証明書を発行する義務を負うものではないとされているところ(最高裁第三小法廷昭和五〇年五月二七日判決、金融法務事情七五六号三〇頁)、その趣旨は本件にもそのまま妥当すると考えられる。

すなわち、印鑑証明は、官庁公署がある印影がさきに本人の印鑑として届け出た印影と同一である旨を証明することであり、その証明書の機能は本人の確認あるいは本人の真意の確認の手段となることを目的とするものであるから、印影の同一性判断そのものがその制度目的にほかならず、したがって当該担当者の注意義務もほとんどそれに向けられていると言ってよいし、そのためには印鑑登録原簿等も制度的に具備されているのである。これに対し登記申請書受理の際には、登記済証に押捺された庁印等の同一性について判断するといっても、それに要求される注意義務の程度は、右印鑑証明書を発行するに際して印影の同一性の判断に要求されるそれと比較して、少なくとも軽減されることはあっても加重される理由は見出しえないことが明白である。それ故に、制度上対照すべき庁印等の原簿も存在していないのである。

そこで本件についてみると、まず偽造登記済証の庁印については、なるほど拡大鏡を用いあるいは両印影を重ねあわせればその相異は発見しえたかもしれないが、肉眼照合により一見明瞭であるといえないことは言を俟たぬところである(なお、原審における第二回寺島証人調書一四、一七丁のとおり、本件の各偽造登記済証は現状よりもかなり鮮明であった。)。

また登記済印と称されるゴム版は事務簡略化のための登記済の旨の記載にかわるゴム版にすぎず、右の庁印と同列に扱うべきものでないから、右の庁印における程度の注意義務が要求されるものではなく、登記済証の紙質や記載の形態等に対するそれと同等と解すべきものであり、これらについては社会通念上一般に登記済証として通用しないような形態である等その真否につき一見明白な疑いを生じさせる程度のものでない限り、これを看過したとしても注意義務違反を問われないと解するのが相当である。

これを本件についてみると、本件各偽造登記済証に顕出されている登記済、受付年月日等の記載様式は到底一見明白な偽造の疑いを抱かせるようなものでないことが明らかである。

このように本件は、前記判決の趣旨にてらしても登記官に過失ありとすることはできない。

二、証拠≪省略≫

(被控訴人)

一、控訴人の主張に対する反論

控訴人は、登記済証に「登記済ノ旨ヲ記載」するのは、単に登記を経由した事実を認証、表示する為であり、また「登記済印」なるものは任意の形式で足りるのであるから、登記官が法律上「登記済印」を押捺する義務を負うものではなく、従って「真正な印影と対照する」義務を負うものではないと主張しているが、右控訴人の主張は不当である。

1、登記申請、受理において登記官は、原判決が判示した通り、申請書に添付された書面の形式的真否を、添付書類、登記簿、印影の相互対照などによって判定し、これによって判定しうる不真正な書類にもとづく登記申請を却下すべき注意義務が要求されるのであって、登記申請書類中に含まれる登記済証の審査についても、同様の注意義務が要求される。

従って登記官は、登記済証の形式的な真否を判定するため(不真正であれば登記申請を却下すべきである)、登記済証に押捺されている登記済印の印影自体から、又は当時の真正な印影と対照することによって、その登記済印の真否を判定する義務を負担していると考えるのが相当である。

2、控訴人は、登記済証に「登記済印」を押捺することは登記官の義務でないと主張しているが、(一)不動産登記法第六〇条一項によれば、登記済証に「申請書受附の年月日、受附番号、順位番号、及び登記済の旨を記載し、庁印を押捺する」義務及び権限は登記官にあることが明らかであるし、また(二)右「登記済の旨の記載」に代るものとして「登記済印の押捺」が、本件登記申請当時の事務慣行として登記所において実施されていたこと等から判断すると、控訴人の主張は余りにも実情を無視した形式論であって不当である。

3、また控訴人は、「登記済ノ旨ヲ記載」する方法は、任意の形式で足りるに拘らず、登記所が「登記済印」なるものを使用するようにしたのは、事務簡素化のためのみにその理由があるように主張しているが、この点についても不当である。

(一) 本件の偽造ゴム版の受附年月日に刻された昭和三七年六月当時実施されていた昭和三二年七月九日付民事甲第一、一二七号各法務局長及び地方法務局長あて民事局長通達にかかる不動産登記事務取扱手続準則第三四条一項によると、登記済印としては、付録第三〇号様式による印版を押印することになっており、右様式例とよると印版は、縦約七センチメートル、横約四センチメートルの長方形で、当時東京法務局渋谷出張所の真正の登記済印(乙第三号証左側の登記済印)と同様のものが図示されている。従って、右通達がある限り、「登記済の旨を記載」する方法は任意で足りるし、登記済印の形状も確定していないとの控訴人の主張は不当である。

(二) 次に前記通達により、「登記済の旨」の記載に代るものとして「登記済印」を、全国の登記所において画一的に使用することにした理由について、控訴人は事務簡素化のためのみを主張しているが、それのみではない。

前記の通り、登記官は登記済証に「登記済の旨を記載」する義務及び権限を有していることから、当然に、「登記済の旨」の記載が権限にもとづいてなされたか否かの形式的真否を審査する義務を負担しているのであるが、仮に「登記済の旨」が任意の形式で記載されていたのでは、登記官が右審査をするにおいて、どの程度のことを審査すれば義務違反を問われないかを形式的、画一的に判断することが極めて困難である(控訴人は「例えばきわめて稚拙な文字によるなど一見してその真否につき疑いを生じさせる程度でない限り義務違反を問われない」と主張しているが、その判断基準は明確でない)。

そこで、前記通達により、「登記済の旨」の記載方法を画一的にして、登記官の審査(注意)義務の内容(範囲)を明確にするため、「登記済印」の大きさ、形状、形式等を定め、その使用を義務ずけ、登記官において、登記済証に押捺されている登記済印の印影自体から又は真正な印影と対照することによって、登記済印の形式的真否を判定し、容易に登記済印が不真正なものであることを看取できたにも拘らず、これを看過した場合にのみ登記官の義務違反を問うことにしたものであって、その限りで前記通達は、事務簡素化以上の存在意義を有するものと考えるのが相当である。

(三) 右の点に関連して控訴人は、「登記済印」の使用により登記官の審査義務が加重されるのは背理であると主張しているが、控訴人の認識は誤りである。むしろ「登記済印」の使用により、これまで不明確であった登記官の審査義務の内容(範囲)が明確になり、かつその審査が容易になったと考えるのが相当であって、審査義務の軽重には関係がない。

二、証拠≪省略≫

理由

一、原判決の理由一、二(原判決書一八枚目表二行目から二三枚目表五行目まで)に判示するところは、次に付加するほかは、当裁判所の判断と同一であるから、これを引用する。

(控訴人の主張について)

1、不動産登記法六〇条一項の規定の目的の一つが、登記済証の還付を受けた登記権利者がその後登記義務者として権利に関する登記を申請する場合等に登記義務者本人が当該登記を申請していることを確認するための手段として役立たせるためであることは控訴人主張のとおりである。

登記申請の際、登記義務者の権利に関する登記済証の提出を要するのは、それによって登記義務者と称する者がはたして登記簿上の登記義務者と同一人であるか否か―すなわち登記義務者と称する者がはたして真の登記義務者であるか否か―を登記官において知るために必要とされたもので、真の登記義務者でない者によってなされる不真正な登記申請を予防しようとするにある。

この登記済証の真正を担保するものが「登記所の印」の印影(以下「庁印」という)であること、及びいわゆる「登記済印」が、登記済の旨等を記載するについて手書にかわって事務簡略化のために使用されている「ゴム版」ないし「木版」であることは、控訴人主張のとおりである。

しかし、(1)、登記済証の真正を担保するものが、「庁印」のみであるとはいえない。

登記済証の用紙、貼用印紙、記載の形態、及び「登記済印」もまた、登記官の形式的審査の際に、偽造発見の手がかりとなる以上は、その真正を担保するものといわなければならない。

また(2)、「登記済の旨を記載」するのが任意の形式で足りるとはいえない。昭和三二年七月九日付民事甲第一一二七号各法務局長及び地方法務局長あて民事局長通達にかかる不動産登記事務取扱手続準則三四条一項によると、付録第三〇号様式による印版を押印することになっていたのである。

2、登記官は、登記済証の形式的真否については、「庁印」の印影の形状の照合のほか、例えば登記済証の用紙、貼用印紙、記載の形態等を審査しなければならないこと、及びこれらを総合的に観察し、職務上の経験に基づいて判断しなければならないことは、控訴人主張のとおりである。

3、そして、「登記済の旨の記載」の部分についても右と全く同様である。

特に前記準則により、印版(「登記済印」)の押捺によって、右記載がなされていた以上、昭和三七年六月一六日当時の東京法務局渋谷出張所の真正の「登記済印」と、偽造された本件「登記済印」との対照も可能なのであって、原判決書理由二の3記載のとおり、後者の印影自体から、又は前者との対照によって、容易に本件登記済印が不真正なものであることを看取できたはずなのである。

4、ゴム版による「登記済印」は、行政事務の簡素化を目的として作られたものであろうけれども、一旦作られた「登記済印」は、右目的を達すると同時に、「庁印」同様、その形状と字体の審査、登記所で使用されている「登記済印」との比較によって真偽の識別を容易にし、偽造発見の有力な手がかりとなるのであるから、この点に着目して、登記済証偽造の看過についての審査義務違反を判断するのは相当であって、これを誤りであるということはできない。

5、制度上、対照すべき「庁印」等の原簿が存在していないのは、登録印鑑の数が多い印鑑証明書の場合と異なり、「庁印」及び「登記済印」の数が少ないからであり、≪証拠省略≫によれば、登記官においてもし審査の便宜のため対照用の原簿を作成しようとすれば、僅かの手間で足りることが明らかである。

6、このような審査を行えば、従来どおりの人員方法で処理するかぎり登記官の事務処理が一層渋滞することは予想されるが、新しい発想のもとに機械を導入するとか、合理的で迅速な処理方法を考案することにより、一層慎重な審査も可能と考える。これを、現在以上に慎重な審査は不可能であるとして放置することは行政に当る者として許されるものではない。

二、原判決の理由三(原判決書二三枚目表七行目から同二六枚目裏九行目まで)に判示するところは、次に付加訂正するほか当裁判所の判断と同一であるから、これを引用する。

1、原判決書二三枚目裏六行目の「更に」から同八行目の「認められる。」までを次のとおり改める。

「更に報酬として奥平原理に対する額の八分に相当する一〇八万六、三六五円の範囲内で一〇〇万円を支払う契約をし、なお控訴人に対する弁護士費用の損害金の請求が判決で認容され、控訴人から支払われたならば、そのうちから既に支払った着手金三〇万円を差し引き、余分が出れば、それを被控訴代理人両名に謝金として支払うことを約していることが認められる。」

2、原判決書二四枚目表八行目に「及び後記認定範囲に属する額の弁護士費用」とあるのを、「二〇万一四〇〇円及び弁護士費用のうち後記認定の一〇〇万円合計一二〇万一四〇〇円」と改める。

3、原判決書二五枚目表五行目から六行目にかけて「甲三号証の一二」とあるのを「甲三号証の一、二」と訂正し、その後に続けて「同七号証、同八号証の一、同号証の二の一、二、同号証の三、原本の存在及び成立に争いのない同一一号証、原本の存在に争いのない甲四号証の一、二(同一の末尾上段矩形の登記済印、下段の庁印、同二の末尾上段の矩形の登記済印、中段の庁印が、いずれも偽造された印章により顕出されたものであることも当事者間に争いがない)、同五号証の一の一、二、同号証の二、三、同号証の四の一ないし三、同六号証の一ないし三の各原本の存在」、を付加する。

4、原判決書二五枚目裏末行の「認められる。」から同二六枚目表七行目の終までを次のとおり改める。

「及び被控訴代理人古閑陽太郎の訴訟準備のための証拠収集活動は、昭和四七年七月一二日の一日間で足り、同人の同日の東京法務局渋谷出張所と警視庁愛宕警察署への出張は、いずれも被控訴人の車で行ける近距離のものであったこと、右収集証拠によると、奥平原理が右訴訟で抗争したとしても、被控訴人の敗訴する可能性はまずなかったことが認められる。また奥平原理に対する訴額は一三、五七九、五六〇円であったことは記録上明らかであり、成立に争いのない甲一〇号証によると、東京弁護士会、第一弁護士会、第二弁護士会が定めた弁護士報酬規定によれば、判決手続の手数料(着手金)及び謝金の最低額は、右訴額の各六分、仮処分手続のそれらは各三分合計一割八分の二四四万四三二〇円であることが認められる。以上の事実その他本件訴訟にあらわれた一切の事情を考慮すると、弁護士費用のうち前記登記官の違法行為と相当因果関係に立つ損害として控訴人に負担させるべき金額は一〇〇万円をもって相当と認める。」

三、以上の理由により、被控訴人の本訴請求は、そのうち損害金一二〇万一四〇〇円及びこれに対する訴状副本送達の日の翌日であること記録上明らかな昭和四七年九月一九日から右支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分は正当と認められるから、この限度でこれを認容すべきであり、その余は失当として棄却すべきものである。

よって本件控訴は理由がないからこれを棄却し、付帯控訴は一部理由があるから、前記と結論を異にする原判決を右のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九六条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡松行雄 裁判官 唐松寛 木村輝武)

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